2016年03月26日

遊び工房:おはなしコンサート

 あちこちで花が開き始めました。
 4月17日、久々に大村千秋さんのフォルテピアノとともにベートヴェン企画、おはなしコンサートを開きます。
 前回は、話したいこと盛り沢山で、レクチャーコンサートになってしまいました。時間内に収めるために、ほんの一例しか挙げませんでしたが、「おはなし」程度にはなりませんでした。深く専門的な話を好まれる方には好評だったのですが、それにしても、我慢くらべみたいになってしまって、たいへん申し訳ないことをしました。

 「実験」ではなく、「遊び」で。
デュオ(室内楽)として音にしていくとき、演奏者はリハーサルでどのような試みをしているか、説明し弾きながらお見せします。また、「あの当時の弾き方はこうだった」だけで終始しないような、当時の楽器とその奏法で、みんなよく知っているベートヴェンの音楽がどう新鮮になり、面白くなるか、拙い話のあとには一曲通しての演奏と共にお楽しみいただけるよう考えています。お客さまとのおはなし交流も大歓迎です。

 モーツァルトのオペラ『魔笛』のパパゲーノの有名なアリアのテーマを使った、ベートーヴェンによる変奏曲。ベートーヴェンはウィーンに移り住む前に、モーツァルトに会い、教えを受けようとしたことがあります。モーツァルトは彼の演奏を聴き、周りの人に「この若者に注目したまえ。いつか話題となるものを世間に提供するだろうから」と言ったとか・・・。『魔笛』のなかでも強く印象に残ったのでしょうね、パパゲーノの有名なアリアは。初版の表紙には「オブリガートのチェロ付きピアノのための」と印刷されています。響きとしてもチェロの彩りを添えたピアノの曲、ということかな。そう、ピアニストベートーヴェンにとっては、ピアノと他の楽器の作品においてはソナタでさえも「ピアノと◯◯のため」なのです。
 そして、チェロではあまり演奏されませんが、ピアノとホルンまたはチェロのためのソナタ。ヴァルヴなしのホルンの名手だったプントの能力を、十二分に引き出すために書いたソナタです。ただ、彼以外の奏者にとっては難曲だったので、出版の際、出版社は需要の拡大をねらって、チェロでも弾けるようチェロパートを付けました。ベートーヴェンもそれを是認したとはいえ、ホルンへの入れ込みように比べれば、チェロパートについてはオマケなような気もしますが・・・。音楽の内容は、4年前に書かれた二曲のチェロソナタより構築性が明確で、声部の扱い方が整理されており、迷いのない推進力を感じます。作品18の6曲の弦楽四重奏を書いた後の充実度が、確かに現れています。
 彼にとって芸術活動とは、「自由」であると確信していること。演奏技術の可能性も既存の枠に収まらないし、人間や思想が権力によって縛られない、と考えて生きていました。市民が立ち上がったフランス革命直後のヨーロッパの不安定な時代に、人が自由に生き創造することを一貫して求め、迷い挫折しながらも自らの音楽の力を信じたベートーヴェン。ピアニストとして人気上昇中、意気揚々、乗りに乗っている頃の作品を取り上げます。

 チェロとフォルテピアノによる「遊び工房」へ、ぜひお越しくださいませ!

4月17日(日)14時(13:45開場)
《ベートーヴェンからの手紙》おはなしコンサート
富田牧子(チェロ)、大村千秋(フォルテピアノ)

場所:古楽研究会 1階 Space 1F
曲目:ベートーヴェン/魔笛の主題による12の変奏曲 ヘ長調 作品66、
ピアノとホルンまたはチェロのためのソナタ ヘ長調 作品17・・・ほか
料金:一般3500円/ペア6000円/大学生まで1000円/小学生500円
チケット取り扱い・問合せ:MA企画 kikaku_ma☆yahoo.co.jp(☆を@に変えてください)好評発売中!
チラシはこちら20160417おはなし.pdf
posted by makkida at 12:32| ベートーヴェンからの手紙 | 更新情報をチェックする
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