2017年の初めに。世界の一人一人が平和で暖かな繋がりを持ち、豊かな一年となりますように。
今年もやります。バッハで近現代の音楽をサンドイッチ!
ブラームスの好んだピアノは、現代の金属製のフレームの入った重厚な低音と豊かな響きを持つ楽器ではなく、軽やかな音の木製のフォルテピアノでした。1800年半ば当時のピアノで音を出してみると、楽譜に書かれてある彼のアイデアが目の前に明解に形となって現れます。
例えば、ピアノとチェロのためのソナタe minorの出だしは、ピアノより1オクターヴ低い音域でチェロがテーマを弾きます。曲中でよく現れる単音で歌われるチェロの旋律に対し、裏拍を波のように打つ鼓動のようなピアノは、4声にとどまらず、いっぺんに7つも8つも和音が鳴ります。現代ピアノはすべての音が均等に音が整音されて、どの音域を弾いてもよく鳴るので、この曲を現代のピアノで真面目に弾こうとすると、チェロを圧倒してしまいます。しかし、当時のピアノは音域によって音質が変わり、ボリュームより音色が特色として出るので、チェロも含めてそれぞれの性格が明確になります。チェロの低音の方が存在感があり、ピアノの和音は空間にキラキラと広がっていきます。ベートーヴェンやブラームスのように、それぞれの楽器が対等に扱われ、各声部が独立したソナタでは、このようにバランスがとれると演奏者も聴き手も幸せでしょう。
今回はその音のイメージを持って、当時の演奏法も考慮に入れつつ工夫してブラームスに取り組んでいます。
このソナタの第3楽章は、バッハの「フーガの技法」のコントラプンクトゥス13のインヴェルススからテーマをとっているフーガです。このフーガもピアノとチェロで演奏します。
ヒンデミットの音楽は意外と思われるかもしれませんが、一度に鳴るピアノの音が少ないので、現代ピアノでもチェロと弾いてもすっきりとしています。彼は、中世やバロックなど古い音楽を研究した時期があり、ヴィオラ・ダ・モーレのために作曲もするほどでした。古いものからの学びを踏まえて、現代のピアノを念頭に置いて作曲したため、チェロとピアノの室内楽でもバランスが自然に取れているのでしょう。
変奏曲は、「求婚に出かけた蛙」という題名の古いイギリスの童謡を題材にしており、元になる詩は1548年にスコットランドで出版された詩集に収められています。蛙がネズミのお嬢さんに求婚し、ネズミの伯父さんの許しを得て結婚パーティが開かれる。虫や動物が現れ、最後に出てきた雄猫がネズミをぱっくり。残った蛙は池に飛び込み、蛇にパクリ。13から成る詩の内容を音楽に表現した、物語風のユニークな作品です。
それぞれの曲の内容をみるときに、作曲家の生きた時代背景から一歩踏み込んで、実際に彼らが馴染んでいた楽器や演奏法を知ることで、今の私たちがより作曲家に近づくことができます。そこから自分の身体を通し、イメージを豊かに膨らませることで、音楽が生き生きと姿を現わすのです。
低音から高音まで均一にバランスが完璧に取れたスタインウェイではなく、音域によって多少の違いがあるベーゼンドルファーのピアノ、そしてチェロはいつものようにバロックとモダンの様式の楽器を2台使います。
正しい答えはない音楽。毎回のコンサートが試す場のようになっています。
今回はこのような視点から楽しんでいただけましたら幸いです。
1月29日(日)15時開演(14:45開場)
チェロとピアノ〜誕生月に感謝をこめて、サンドイッチコンサート
ピアノ:渡辺晴子
於 エナスタジオ(代官山)
ベーゼンドルファーと弾く、ブラームスとヒンデミットのチェロとピアノのための音楽を、J.S.バッハの無伴奏組曲でサンドイッチ
[曲目]
J.S.バッハ:『フーガの技法』より コントラプンクトゥス1
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV1008
ヒンデミット:「求婚に出かけた蛙」古いイギリスの童謡による変奏曲 (1941)
フーガの技法より 3声のコントラプンクトゥス13 インヴェルスス
ブラームス:ピアノとチェロのためのソナタ第1番 ホ短調 op.38
☆終演後、お時間おありの方は歓談のひとときをお楽しみください。
[料金]一般3500円/高・大生2000円/小・中生1000円◆完売御礼◆おかげさまで本公演は満席となりました
[予約・問合せ]MA企画 kikaku_ma☆yahoo.co.jp(☆を@に直してください)
[電話予約・当日連絡先]BEATA(ベアータ)☎03−6317−8916
💡チラシはこちらからご覧ください20170129サンドイッチコンサート.pdf
2017年01月15日
ブラームスとヒンデミットのチェロとピアノのための音楽を、J.S.バッハの無伴奏組曲でサンドイッチ
posted by makkida at 11:40| あんなこと こんなこと
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