2017年05月29日

音、感触の様々な違い

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どんな音を出せばいいですか、という問い。
あなたが「感じるように」。私が感じるものしか音にできないから。まずイメージがあってこそ音が出せる。
目を白黒させるか黙ってしまうか、または「でも・・・」と否定する声が聞こえる。
どこをどうやって手を動かせばいいかを知りたいのはわかる。
作曲家の楽譜を前にして、まず音符を見て追いかける。とにかく最後まで、指を抑えて音を当てて弓で弦を擦って音を出す作業を始める。それを続けると、音を出すか出さないか、onかoffか、が脳にとって当たり前になってしまう。
楽譜は、どこへ進むのかを知る地図であり、どんな台詞があるのかを教えてもらう台本のようなもの。情報が全てあるが、全ては書かれていない。作曲家が残したかったアイデアや思考のほんの一部、氷山の一角。
「それは音楽の話でしょ」という声が聞こえる。
あなたが出して(出そうとして)いるのは音楽の音でしょう?

自分の内側から音が出る。どうやって身体を動かすか、それは内なるリズムである。リズム感が、圧力や速さや色々な種類の弓の動かし方を決める。意思が身体を動かす。
弦楽器で難しいのは、弓をうまくコントロールできないと思ったような音が出ないこと。
まず自分がどんなイメージを持っているのかを知るために歌ってみる。頭で考えている形より、思わず歌ってみたときの方が素直な自分の感覚だったりする。音程がうまくつけられなかったら音程はいらない、声に出すだけでいい。リズムを声に出して言ってみる。言葉を喋るように。
スムーズに声に出せるようになったら、弓で弾いてみる。すると思いがけず(笑)弾けてしまったり、音程は悪くてもリズムはうまく取れたりする。初めにできなかったときより、できないポイントが明確になる。そうやって少しずつイメージに近づけていく。

意思が身体を動かす、と言った。
頭で「こうやって動こう」と考えるのが意思だとすれば、これはちょっと違うかもしれない。
自分の内側の思いやアイデアに突き動かされるようにして、内なるエネルギーとなって、身体を動かしてくれる。

リズムをうまくつかめないとき、頭で考えるのではなく、身体のあちこちを使ってみる。よく手を叩きながらリズムの練習をするが、その叩き方に硬さがあれば、つまり身体が緊張して硬くなっていたら自然なリズムにならない。リズムは自然の動きのなかにある。手で膝を打って、反動で空に円を描きまた膝に帰ってくるまでが一つの拍で、そのなかにリズムがある。その動き自体がリズムである。
腕の力を抜いてみよう。腕の重さが感じられる。手を打つときその重さがエネルギーとなる。思い切り打てばその反動も大きい。
口も一緒に動かしてみよう。手を打ちながらリズムを言ってみる。ぴったりく来るだろうか。口で発することを頭
が邪魔していると感じるだろうか。呼吸を止めたりしていないだろうか。
身体が固まってきたら足も動かしてみる。よく弾きながら拍を取る人がやる、つま先だけパタパタ動かすのではなく、かかとを上下に動かす。左右の動きを加えたっていいし、膝を大きく動かしたり、ぴょんぴょん跳ねたっていい。口から足の先まで一体になるまで続けてみる。
楽器を置いてこんなことをしていると、身体が温かくなって、身体の中が巡ってきているはず。そこで楽器を手にとって音を出してみよう。
さっきより動きが軽やかになっているかもしれない。

さて、「どんな音」という話だった。
印象派の絵画を見ると、それぞれ画法の違いがあり、色の使い方だけでなく、様々な筆のタッチがあることに気づく。弦を弓で擦るのも、筆のタッチと同じだ。微妙な違いが音色の変化を生む。
難しいだろうか?
猫を撫でるのと、人間の赤ちゃんに触れるのと、ヒヨコや小鳥を手で包むのと、同じ柔らかいものでもそれぞれ違いを持って触っているだろう。生まれたての生き物と、年老いて硬くなった生き物。新芽とゴツゴツの木肌。ふかふかの土。ぬかるんだ土。乾燥して埃っぽい土。
弦に弓を当てるときに、限りなく色々なやり方が可能だ。感じること、自分で考えることをやめなければ、可能性はたくさんある。

どんな音を出すかは、自分の内側で感じることであり、それはとても具体的なイメージだと思う。
posted by makkida at 11:10| 楽器演奏と身体 | 更新情報をチェックする
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