
膝に挟む姿勢は楽器が大きいと長い時間は続けられない。楽器のサイズは細部にわたって楽器によって違う。
私のバロックチェロは、楽器の厚み、下半分の長さや幅がもう少し小さければ、抱えるのが楽だと思う。それだけではない。表板が厚いので音がこもり気味で、クリアに軽く発音しない。が、物は考えようで、悪いことではない。そもそも低音楽器は鳴り方が遅れてくるものなのだ。太い弦を弓で引っ掛けて発音し、響きが板に伝わり空気が振動するのには時間がかかる。
その上、バロック時代にチェロはまだ通奏低音としての役割が主流で、それに対して独奏楽器として技巧的なことも色々試してみようと発想もあり、細かい音符を速く巧みに弾いたところで、高音楽器のようにパリパリと聴こえた訳ではないだろう。この時代に、果たして、全ての音符が輝かしく明瞭に聴こえることが素晴らしい演奏だったのかどうか。電気を通して聴く高音質のデジタル音に慣れてしまった現代人が想像する「輝かしく明瞭な音」と200,300年前に奏でられていた「それ」が同じではないだろう。
・・・などと色々考えながら、どうしてこの痛みがくるのか、耳が詰まるのか、しっくり来ないのか、あれこれやってみる。どうやら、楽器がそばで鳴る音が大きすぎて、無意識のうちに顔を遠くに離してしまうらしい。
初めの構え方からいったん離れてみようと思う。やはり、体の丈夫さや大事にするポイントは、演奏家それぞれなのだから、私には無理だ。・・・そんなことの繰り返し。
正しい構え方、なんてない。
上手くなるには自分で考えて練習するだけ。人それぞれどこかに何か問題を持ちながらやっている。どんな努力も素晴らしい!
だから、まず耳が良く、音程感リズム感があり、いい音で、知的で、音楽的で、体格に恵まれていて、楽器をリラックスして演奏し、身体にも無理がない。その上、暗譜で巧みに難曲を弾きこなし、日々大活躍している演奏家というのは、もう奇跡みたいなものだ・・・。どの時代にも精通していて、何を弾いても聴衆に感動を与えられなんて・・・あり得ない!