別名ギター=チェロ。アルペッジョーネ。19世紀初めにウィーンでギター製作者シュタウファーが作った、弓で弾くギターです。調弦はギターと同じ、低い方からE-A-d-g-h-e(ミ、ラ、レ、ソ、シ、ミ)。
シューベルトのアルペッジョーネのためのソナタはこの楽器のために書かれました。
チェロで弾いても素晴らしい音楽ですが、弾きにくい。それは、技術があれば思い描くように弾けるかというと、そういう意味ではなく。音楽と楽器の最も鳴る場所(調性のせいではなくて。a-Mollは鳴りやすい調です)がぴったり来ないジレンマで、いくら練習してもどうもしっくり来ない、随所に謎が多い曲でした。音楽はものすごく自然なのに、どうしてこんなに苦労が多い動きをしなければならないのか。
しかし!ここ、これ!霧が晴れたよう。
この高音のeは一番のクライマックスなのに、チェロで弾くと苦しそうな音になる。技術的な問題ではなくて、楽器が楽にならないポジションだということ。元の楽器なら、一番楽な姿勢で弾ける場所。音楽が拡がる時に、自然に、伸びやかに歌える、と言えば良いか。ピリオド奏法が面白いのは、こういうことです!
そして、これなんだよな〜。私の抱いていたイメージ通りの音形。高音から最低音まで、まるで鐘が鳴るような、風が吹いて弦が触れて鳴っているように自然な響き。
楽器が「鳴る」と言っても、チェロのように朗々と響くわけではありません。そういう意味では「鳴らない」。別の楽器ですから、響き方が全く違うのです。楽器として優れているかどうか、ヴァイオリン属と比較する話ではないのです。
そしてこの曲は、感情を音に込めてドラマチックに、豊かな音量で弾くような音楽ではないのがわかります。シューベルトの孤独はそういう音ではないから。
チェロの演奏に慣れてしまっていて、物足りないと思う聴衆はいるでしょう。「チェロ版アルペッジョーネソナタ」が別の音楽になるのはしょうがないと思います。
アルペッジョーネを手に入れて一年ほど経ちます。ギターが弾けない私は、なかなか身体が楽器のサイズやなり方、調弦に慣れず、頭がスイッチせず、取り掛かっては止め、弾いては止め、音階やシュスターの教則本をノロノロと繰り返し、楽器は鳴らないし頭は回らないしで眠くなる、で、進まない。やっとシューベルトにとりかかったところ。左手(指遣い)はまだまだ。はぁ。やンなっちゃう 。のろまで不器用な私・・・。
楽器が応えるようになるのはいつのことか。