2018年06月18日

民謡・・・曲紹介1[茶房ライヴその2 viola&cello! ]

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20世紀前半を生きた音楽家の作品を演奏する時、第二次世界大戦が彼らの人生にどう関わっているのか、必ず通る道です。今回のプログラムでは、ドイツのヒンデミット、ユダヤ人のシュール、ポーランドのルトスワフスキの作品を集めました。プログラムを組む時に戦争を意識したのではなく、偶然、集まったのでした。一つ一つの音楽は、まるで小品のように性格がはっきりして楽しめる曲です。
が、この歴史の側面からみると、この組み合わせはかなり重い話となります・・・。

 ナチス政権下のドイツで活動していたヒンデミットにとって1934年は出来事の多い年でした。ユダヤ人演奏家との共演や交流を隠さなかった彼は、当然「ドイツ人としての使命に背く」として不評を買っていましたが、この年の初めに非難運動が始まります。文化協会は彼の作品の演奏禁止を宣言。それに対して、この年の3月に初演された彼の交響曲『画家マティス』を指揮したフルトヴェングラーは怒り、新聞(Deutsche allgemeine Zeitung)にヒンデミット擁護の記事を寄せる、という有名な事件が起こりました。
 ヒンデミットは作曲活動だけでなく、創意やテーマを持つコンサートや音楽祭を企画し組織する能力にも長けていました。ソロや弦楽四重奏団のヴィオラ奏者でもあり、中世、バロック音楽にも通じ、ヴィオラ・ダモーレも演奏。同時に、教授活動にも熱心で、アマチュア音楽家のための作品『演奏する音楽Spielmusik』もたくさん書きました。このような多彩な活動は1920年代からずっと続けられていました。
 ヴィオラとチェロのための二重奏曲は、この1934年に作曲されました。彼のリズムには、まるで彼のように休まず動く活動(それは機械の運動とは違うのですが)を思わせる特徴的な律動があります。彼がよく楽譜に書き込んだ動物たちがワルツを踊ったり、飛んだり跳ねたり、そんなイメージも湧きます。
 画家マティアス・グリューネヴァルトがドイツ農民戦争時に芸術を捨てて政治活動に身を投じるが、やはり無駄だと悟り芸術家に戻ろうとする話『画家マティス』、翌年書かれたヴィオラのためのコンチェルト『Der Schwanendreher白鳥を回す(焼く?)男』、両方に民謡が使われています。民謡は人々に、何か懐かしいもの、大切な生活、時代を超えて変わらない情感を想起させる力があります。ある特定の国や民族だけにとどまらないものです。
二重奏曲の中でも顔を出す変わった音形のメロディ、バグパイプを思い起こす5度の和音の連続。政治情勢の歯車にも乗せられめまぐるしいときこそ、立ち返りたい情感を大切にしたかったのではないかと想像します。

そのヒンデミットにベルリンで学んだジクムント・シュールは次へ続きます。

posted by makkida at 18:42| あんなこと こんなこと | 更新情報をチェックする
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