2月3日のコンサートは、関西を中心に活動されているチェンバロ奏者、三橋桜子さんとのアンサンブル。昨年10周年を迎えていたベアータオルガン練習室の「10〜11周年記念」&「ザスマン チェンバロお披露目」演奏会でもあります。
三橋さんはお連れ合いの作曲家そして鍵盤楽器奏者パブロ エスカンデ氏と、バロックと近現代音楽ネオ バロックを組み合わせたプログラムで鍵盤デュオや、室内楽のコンサートをしています。
バロック音楽の大事な特徴は、「喋る」こと。つまり発音。言葉を喋るように、会話またはセリフを話すように、音をとらえ発します。ただ単語や文章を発音するだけではなく、言葉の意味を理解した上で自分の身体から発する言葉、生まれてきた言葉として発するのだと思います。
近現代の作曲家はバロック、ルネサンスなど昔の様式を学び、表面的な引用ではなく源泉として取り入れ、自分自身の音楽語法にした人々が多くいました。全てとは言いませんが、それぞれの作曲家の語法、最もシンプルな部分での音の作り方は、バロックにおける発音の仕方、喋り方と共通点があるように私は思います。
そのような意味で、桜子さん&パブロさんの活動内容は興味深く、共感しています。
今回のプログラムでも、バロック音楽と、20、21世紀のシュニトケとペルトを演奏します。
【プログラム】
J-N-P. ロワイエ(1705-55):クラヴサン曲集(1746)より アルマンド、繊細な女、スキタイ人の行進
J.バリエール(1707-47):チェロと通奏低音のためのソナタ ニ長調 第4巻第1番
F.ジェミニアーニ(1687-1762):チェロと通奏低音のためのソナタ ニ短調 作品5 第2番
A.シュニトケ(1934-98):古様式による組曲(1972)
A.ペルト(1935- ):鏡の中の鏡(1978)
J.S.バッハ(1685-1750):ヴィオラ・ダ・ガンバソナタ 第2番 ニ長調 BWV 1028
プログラムを組んだ後に、ちょっとした楽しい発見をしました。
バロック時代の4人の作曲家は生きた時期が重なっています。
チェロ奏者バリエールと鍵盤楽器奏者ロワイエは、2歳違うだけの同世代、それぞれ40歳、50歳というあまり長生きではなかったこと。
J.S.バッハとジェミニアーニも2歳違い。活躍した場所は違いましたが。
バッハから250年後に生まれたペルトとシュニトケ、彼らは1歳違い。出生や活動、作風は当然ですが全く違います。それぞれが古い音楽の様式を用いているのに、それぞれの生き方が音楽に表れます。そこが面白い。
それから、これも偶然ですが、二人で弾くバロックの作品はニ長調かニ短調、というのも(笑)
ところで。
ペルトの「鏡の中の鏡」は瞑想の音楽。自分が鏡の中にいるような、水面の上に立っているような、この世とあの世の間のような感覚です。
シュニトケの組曲は伝統的な古典的な構造で書かれており、和声もいたって古風です。フーガではベートーヴェンのカルテットを思い起こすし、民謡のようなどこかで聴いたような懐かしさがあります。20世紀の作曲家の多くが取り入れた手法ですが、古くて聴き飽きた音楽になるどころか、新しさを感じるのは不思議です。彼の他の音楽は全く違う響きがします。彼がどうしてあんなにも多くの様式を使ったのかは、彼の生い立ちに影響するところがあるようです。
今後もっと勉強してみたい作曲家です。
2019年2月3日(日)15時
BEATAコンサートシリーズ54
三橋桜子(チェンバロ)&富田牧子(チェロ)
【場所】BEATAオルガン練習室
【料金】限定25席・要予約 4000円
【ご予約】ベアータ ☎︎ 03-6317-8916 e-mail beata@ab.auone-net.jp