2020年04月19日

100年前のフォーレ:プレーンガットを張ったモダン楽器とモダン弓の関係

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表現に限界を作らない。
フォーレのチェロソナタ第1番、一楽章の冒頭。この緊張感のある、迫ってくるようなリズム。品格を保ちながらも、不安、憤りを感じるテーマはピアノ(p)で抑えているが、すぐにフォルテで爆発する。
自然に、しっとり滑らかに歌うフォーレのイメージとは遠い。ゴツゴツとした厳しさ。
作曲されたのは、第一次大戦真っ最中・・・。
100年少し前の、恐怖と不安の毎日。その中でほとばしり出る、表出せざるを得ない音楽だった。

作曲家が弦楽器奏者でなかったために、ボーイング(弓遣い)やフィンガリング(指遣い)が身体的にスムーズに運ばないことはしばしばある。でも、それはその音楽が持つ表現力の幅広さとは関係ない。
弱い小指で音色が出ない、とか、できないことに言い訳はしない。
もちろん、弱い指があることが欠点ではない。誰しも弱点はあるものだ。
体型も持っている力もエネルギーの種類も、それから、持っている弓も楽器もその癖も特徴も、ほかの人と違うのだから、演奏者は弾き方をそれぞれが自ら考えて探さなければならない。

プレーンガット弦にしたことで、これまでの弾き方を見直すことになった。
グランドピアノとデュオソナタを演奏するときに、フォルテで音が埋もれないようにするコツ。アタックの付け方、音の輪郭の際立たせ方。覚えてしまったものや思い込みに気づき、疑問を持つ。当たり前にこうするもの、と身に付いていたことを捨てて考え直す。もう一度、譜読みをし直すようなこと。
ただアタックをつけて強い音の性格を作るのではなく、ガット弦で作り出せる音のしなやかさ、伸びかた、倍音の増えかたを最大限に使う。全く違うテクニックを身体で作り出す。
もしかしたらスタインウェイのモダンピアノにかき消されるかもしれない。
一つの音の進みかた、どのくらいの速さで音が進むのか。それと響きの広がりで、一つの場所に留まらないフレージングを描いていく。
彫り起こす、彫刻のような緊張感、そして手応え。

不安、恐れ。
この感染症は100年に一度の危機、と言われる。
この100年の地球上の歴史、どんなことを人間はやってきたか・・・。



posted by makkida at 17:50| ガット弦で弾く室内楽 | 更新情報をチェックする
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