2020年04月28日

バルトークは天才だ!

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自作自演の古い録音が残っているのは興味深いのを超えて、演奏家としては、もう、たいへん有難い資料、宝です。言葉で説明し尽くせない、目に見えない力が伝わります。
Bartók Béla、ピアノの名手でもあった彼の演奏。
誰から借りたのか、いつダビングしたかも覚えていない、カセットテープを持っています。
その場で生まれている音楽の、なんとみずみずしいこと!
彼本人と接点のあったハンガリーの他の一流ピアニストの演奏を聴くと、それぞれ歌があり優れた技術があって、それは素晴らしい洗練された演奏です。が、どんなに完成形の演奏でも、バルトーク自身の内側から沸き起こる生命力を聴いた後では、音はあんなに素早く(または、ゆったりと)動いているのに、音楽の流れが止まっているかのよう。
この先何が起こるか知っていて、終わりまで知っている、そのような出来上がった作品を、音を出す瞬間に力強く意志を持ったエネルギーを伴って生まれる、そのエネルギーが音楽を突き動かし彼の身体と一体となっている(それでいて頭脳は冷静である!)・・・こんな自作演奏ができる音楽家、バルトークは天才!

「民謡というものは、現実には、だれかがそれを歌ったり演奏している瞬間にだけ存在しているものであり、歌い手の意思と歌唱法によってのみ生命を持ちうるものなのである。」 (コンスタンティン・ブルイロユー『民俗音楽の方法に関する草案』より)

民俗音楽研究家としてのバルトークは、民族音楽の収集の仕事は、広範囲に渡る多くの学問的な知識の豊かさが必要だと言っています。言語学、音声学、舞踏、生活、社会学、歴史学・・・。録音機を抱えてあちらこちらの地域に出かけて、その土地の歌える年配者や若い人(歌い手によっては、流行に影響された歌い方をする場合もある)を探し、信頼関係を築く。録音だけでなく、撮影も。
民俗音楽研究者の仕事がどんなに多いかを書き残しています。

芸術、文化の存続のために、どれだけの労力や時間、誠実さ、そして資金が必要か。
人が今ここに存在するのは、人類の歴史の上の一瞬なのであり、一人一人の日常の集まりであり、天の川のように多くの人によって形作られ、永遠に流れていくのでしょう。芸術や文化は生活の一部で、生きる糧です。どうして人は生きるのか、という問いに直結するものです。
人はそれぞれ小宇宙です。
『ミクロコスモス』は、彼の息子がピアノを教えて欲しいとせがんだときに、音楽教育の材料としてバルトークが書いたものです。様々な語法(演奏技術)で、単旋律のシンプルなものから、多声のもの、ブルガリアのリズムを使った(楽譜にすると複雑な拍を持つ)もの、多様な性格の一つ一つの作品が生き生きとした命を持つ小宇宙です。

「全世界で戦争のための準備にあてられている資金のうち、その一年間分だけでも、もし民俗音楽の研究にふりあてるならば、その資金によって、全世界の民俗音楽の大部分が収集しつくされるにちがいない」1936年に発表された文章から(『バルトーク音楽論集』)。

第二次大戦中のハンガリーでは、バルトークだけでなくコダーイ、ドホナーニなどの音楽家が独裁政権に抗議し抵抗の意思表示をしました。その後のソ連の強い影響下での恐怖や苦労を、まだ覚えている人たちもたくさんいます。民主的な国家になって自由が得られた反面、格差社会問題あり、人々の不安を煽るような強権な政治への揺り戻し。
世界あちこちで同じようなことが起こっています。これからもきっと繰り返されるでしょう。非常時、政権に強い権力を持たせることの危険さを知り、民主的な国家では権力を国民が見張っていないといけない。いつでも言い続けなければならない・・・。
posted by makkida at 23:55| あんなこと こんなこと | 更新情報をチェックする
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