
野尻に帰ってくると、空気が澄んでいて呼吸が自然にできるのを感じます。雪が少し積もった夜。冬が近づいて、冷たい空気が頭をスッキリさせます。
今度のギターとのコンサートでシューベルトを弾くこともあって、「冬の旅」の一曲目がずっと頭で鳴っています。
若者の孤独がひしひしと伝わる歌詞。恋人との別れや人間の死を考えることはあっても、自らの人生をやめようとはしていない。ただひたすら孤独を抱えて生きてゆく旅。
アルペッジョーネ ソナタを弾いたり楽譜を読んだりするときに、音楽に引き込まれると、今現在の「自分」から離れる、それは回想というだけでなく、時間の流れと距離感を感じます。映像のイメージのようですが、純粋に音楽の世界なのです。その場に留まらない、でも急がない。いつも懐かしさがある。恥じらいを持つ憧れ。脚色したり、わざと作ったりしなくても、音を追って行くと自然に内側から湧いてくるイメージです。これは、技術を克服しよう、とか、魅せようとする演奏では決して表現できない。
アンドレアス・ショルのように弾きたいなあ・・・(歌だけど)!
野尻にいると、自分の行動(弾くということも)が曖昧でなくなってくる気がします。全てに意味があるとは言わないが、なんとなく、ではない。身体で感じる、確認する、ということかな。
硬くなく、反応があり、手応えがあり、質感があり、空気が動く。
演奏がそうなっていくといいな!

カスパー・ダヴィト・フリードリヒの世界みたい!
自然の神秘が芸術を生むのだもの。
こういう環境で音楽も自然に生まれてくる。
そろそろシューマンも弾きたいなあ・・・!