2021年05月14日

ソルミゼーション から見えてきたこと〜楽器演奏における様々な音色

KIMG2473.JPG
5月ですでに夏日のよう。年間通して平均気温の上昇は気になります。あっという間に梅雨入りです。
こちらは季節が遅れて来ます。鳥たちが呼び交う声、柔らかな風。毎日、緑が増えていきます。

音程や音階の話は色々な観点から興味深い。
絶対音感がない人には自然なことですが、(楽譜がない場合)歌う時にはどの音高からでも歌えます。楽器の場合、移調して弾くことになります。その際、どこが全音でどこが半音か認識できていないといけないですよね。

中世から1600年代半ばまで、音楽家たちはut, re, mi, fa, sol, laの6音(ヘクサコード)の階名で歌う方法(ソルミゼーション)で楽譜を読んでいました。バロック時代の途中まではそれが一般的であり、音楽が複雑になってそのやり方では手に負えなくなってからも、ソルミゼーションを土台にした考え方は残っていました。
ut(ド)とre(レ)の間は全音、re(レ)とmi(ミ)の間は全音、mi(ミ)とfa(ファ)は半音です。その音程の関係をそのままで、C(ド)から始まるut-re-mi-fa、F(ファ)から始まるut-re-mi-fa、G(ソ)から始まるut-re-mi-fa、と移動ドの方法のように読み替えていきます。楽曲を読む時には色々な決まりがありますが、それは置いておいて。同じドーレーミーファという名前でも出てくる音は違う色合いを持っています。固い、柔らかい、中庸なドレミファがあった。
さて、読譜と歌唱だけでなく、楽器演奏とどう関わっているか気になるところです。

弦楽器ではイメージしやすい。
例えば5度調弦の時、一つの弦上で順番に指を並べて行くと全音と半音が出て来ますが、その指遣いをそのまま隣の弦に移すと、同じ指遣いで違う調性になります。出てきた音色も違いますね。弦を変えると色が変わる。
鍵盤楽器だと分かりにくいかもしれないけれど、弦楽器では音高で音色が変化するのは自然です。同じ弦上で弾くのか、移弦して弾くのか、それだけで違います。
鍵盤楽器では、現代の大きなピアノはどこを弾いても同じ音になるよう均一さが求められていますが、100年、200年、300年前に作られたものは、音域によって音色が変わる面白さがあります。

それから、ソルミゼーションで歌うことで、それぞれの人に音の性格の共通認識があった、ということ。現代譜にあるようにf、pや、言葉や速度を書かなくても、同じ地域の人々はわかっていたということ、これは重要なことです。現代の私たちがその当時の音楽を演奏するには、当時の「当たり前」を知らなければならない。作曲当時の視点で演奏する、ということは常に必要なことであり、モダンとバロックに差がないはずです。
バロック期の様式や習慣の影響は、歴史の延長線上の19世紀の音楽にも残っているでしょう。古典派、ロマン派の音楽のベースにバロック以前の音楽の理解がある。
各人が共通認識を持つことは、アンサンブルをする時に、より主体性のある、立体的で生きた音楽に結びつくのではないかと想像します。先生から教えられた通り、誰が弾いても同じ、クローンのような演奏をすることは全く意味がない。

現代譜は道路標識のように、f、p、速度、言葉、記号が書いてあります。随分と大雑把なわけです。音符とその記号を音にしたからといって、音楽的な演奏にならない。それで、共演者と打ち合わせる。ここを少し柔らかく、硬く弾こうとか、緩めようとか、フレーズの収め方をどうしようとか、毎回必要なわけです(言わなくてもわかる相手がいる、という話はまた別で)。または、そこに思い至らない場合、楽譜に書かれていることを正しく演奏することを目指して、大きな音で、誰より速く弾こう、など、人と競争する音楽になるのでは?

fやpは目安でしかなく、音の種類は、音の数だけある。オクターヴ上のドの音は同じではなく、色が違うのです。
楽譜に何も記号は書いていないけれど、出てくる音には、大きいか小さいか、弱いか強いか以外に、様々な性格や抑揚があるのです。凹凸があり、陰影、明暗の度合いが昔の絵画のように大きな対比を持っています。200〜300年前は、夜は今よりずっと暗闇だったでしょうし、ずっと静寂だったでしょう。
そして、倍音の多いガット弦を使うことで、様々な音色を持つ音楽が楽しめます。
posted by makkida at 15:36| プレーンガット弦と楽器 | 更新情報をチェックする
当サイトの写真、記事の無断転載・無断使用はご遠慮ください。 Copyright 2022 Makiko Tomita Kida, all rights reserved.