2024年02月15日

2月24日チェロとコントラバス「ヒストリカルガット弦で愉しむ音楽の対話」

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photo by S. Kida
年初めに京都で行ったコントラバスの角谷朋紀さんとのデュオコンサートを、今月24日に東京で開催することになりました。その時のご案内記事はこちら(プロモーション動画あり)。
18世紀のガット弦製法を研究、再現し、音楽の理想を追求している角谷氏の作った歴史的なガット弦を張ったバロックの楽器(18世紀に作られた)で演奏します。
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20世紀に入ってからも弦楽器にプレーンガット弦を張って演奏するのは一般的でしたが、第1次大戦で負傷者の手術に使われるガットの糸が大量に必要になったこと、ガット弦メーカーの後継者がだんだん減ってしまい産業が衰退したこと、切れにくく丈夫なスチール弦が代わりに使われるようになりました。18世紀の製法による羊の腸の弦は1900年代半ばまで細々と作られていて、20世紀後半でも、スチール弦の音色に渋い顔をする楽器職人や演奏家はいました(*)。人間の耳は慣らされて行くのでしょう、あっという間にスチール弦の種類が増え、ガットという言葉すら通じなくなり、ガット弦という名のナイロン弦も当たり前になりました。
1800年代のロマン派シューベルト、シューマンは歴史的奏法で頻繁に演奏されていますが、ブラームス、フォーレ、ラヴェルなどもガット弦(歴史的なピアノと、場合によってはエンドピンなしで)で演奏されると音色も素晴らしく、音楽表現の新たな発見があるでしょうね。1915年に書かれたコダーイの無伴奏チェロソナタをプレーンガット弦で弾くのは「ピリオド奏法」とも言えるわけですね。
4月のソロリサイタルでは、モダンとバロック(両方とも18世紀の楽器)にヒストリカル・ガット弦を張って演奏します。
多くのバロックチェロ奏者は自分の楽器に、4本の弦のうち上(高音)2本をプレーン(裸)ガット、下(低音)2本をスチール巻きガット弦を張っています。私もそうでしたが、先月のコンサートから、上3本をプレーンガット弦にしました。1700年後半までは、つまりバロック時代はそのようなセッティングが一般的だったのです。
音楽や楽器の様式は、その年から急に全て変わるということはなく、ハイドンやモーツァルトの時代にも膨らみのあるバロック弓を使っていた人もいたように、弦も徐々に移り変わっていったのでしょう。
研究者による解明と一緒に、想像力を働かせながら演奏する楽しさ。「正しさ」だけでなく、その時々に腑に落ちること、身体で感じ判断できる感覚を持ち続けることが大切だと痛感します。
AIや最新技術が、戦争という無差別に犠牲者を生む破壊的行為に繋がる、私たちが避けて通れない問題を抱える今・・・。

今回のコンサートでは、貴重な最新ヒストリカルガット弦による古典派〜初期ロマン派の作品の演奏だけでなく、ガット弦について角谷氏のお話が聴くことができます。
よろしければ、ぜひお越しください!お待ちしております。
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photo by S. Kida
2024年2月24日(土)
BEATAコンサートシリーズ 58
ヒストリカル・ガット弦で愉しむ 音楽の対話
富田牧子(チェロ)角谷朋紀(コントラバス)デュオ

2回公演
【時間】@14:00 /A17:00
【場所】BEATAオルガン練習室
【プログラム】
W.A.モーツァルト(1756-1791):ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調
KV 292(196c)
L.ボッケリーニ(1743-1805):チェロと通奏低音のためのソナタ 変ロ長調 G 565
G.ロッシーニ(1792-1863):チェロとコントラバスのためのデュエット ニ長調 
角谷氏によるガット弦のお話
【料金】各回20席限定 要予約 4,000円
【主催/予約】BEATA(ベアータ) ☎︎03-6317-8916
 e-mail: beata@ab.auone-net.jp

参照書籍(*)ダニエラ・ガイダーノ著「ヴァイオリン属ガット弦の変遷」
posted by makkida at 11:30| ガット弦で弾く室内楽 | 更新情報をチェックする
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