
12月17日(火)BEATAオルガン練習室にて予定しているコンサート「J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲とその周辺」。
論文のタイトルのようですが(笑)。当初、イタリアとフランス音楽(作曲家)の影響をそれぞれ見較べてみよう、と考えていました。
掘り進めていくうちに、「バッハはどうしてチェロのために無伴奏組曲を書いたのか」という問いが避けて通れなくなりました。
通説である、当時ベルリンの宮廷オーケストラが解散されてケーテンにやってきたヴィオラ・ダ・ガンバ奏者クリスチャン・アーベルやチェロ奏者リーニケの影響、というのも強い説得力を感じられないのです。
ヴァイオリンのための無伴奏ソナタとパルティータ6曲とチェロのための無伴奏組曲がセットで書かれたことはよく知られています。
最も高い声部の楽器と、通奏低音を受け持つバスの楽器。和音を同時に鳴らすのが可能で、フーガのような多声部の対位法も可能な楽器、ヴァイオリン。一方で、それらが苦手だけれど、音が良く響き倍音が残るチェロは、弾き手と聴き手の耳と想像力に訴えて、多声部の音楽を可能にする・・・それがこのバッハの無伴奏組曲です。
バッハの鍵盤作品の多くが教育的目的だったのと同じように、ヴァイオリンとチェロのためのこれからの作品もそう考えられます。
最近の研究では、バロック時代には色々なサイズの「ヴィオロンチェロ」があったことは広く認められているところですから、全6曲が現在のチェロと同じ大きさの楽器でされる必要はないことは分かります。特に6番では5弦の楽器が指定されています。4番のフラット3つでアルペッジョが続くプレリュードでは、小さなサイズだと演奏し易いでしょう。ただし、低音の残響は必要です。どのくらいのサイズでしょうね・・・!?
1700年から1720年頃までにチェロのために組曲は他に書かれているのでしょうか。フランスで好まれた組曲の形式をドイツでは、17世紀終わりにヴィオラ・ダ・ガンバのためにガンバ奏者アウグスト・キューネルによって書かれています。
が、チェロには・・・?
バッハの頃には、オーケストラにおけるバス楽器はチェロが一般的になっていたのだろうと思います。ヴィオローネやガンバも使われていますが。
出発点をイタリアに持つチェロとチェロのための独奏作品、そしてイタリアのチェリストたちがヨーロッパ中で活躍した17、18世紀。それがバッハの周辺にどのように影響があったのでしょうか。
無伴奏組曲の第1番と第4番のプレリュードは連続する分散和音(アルペッジョ)で書かれていますが、それぞれ別のリズム(音形)で、和声進行も違います。
調性の響き、それから和声進行と特にソプラノパート(最も高い声部)とバスパート(最も低い声部)の音の動きによって、心がどう動かされるのか味わいたいと思います。
同じ音形のアルペッジョを持つバッハの別の作品と、この無伴奏組曲の情感(曲の性格)は直接関係はないかもしれませんが、どんなものがあるのか探してみるのも興味深いことです。
一回のコンサートでは焦点を絞ってまとめられないので、これから継続して、探りつつ、深掘りしつつ、少しずつ範囲を広げて取り組んでいきたいと考えています。
地球上で長引く戦争が今年も終わらずに継続していくのでしょうか。そして人々は疑心暗鬼に陥り、不安を募らせ、ますます内向きになり、独裁者に従い異物を取り除こうと、過去の人間の悪い歴史を繰り返すのでしょうか。
先の大戦経験世代の方々の訃報が続いています。
一人一人の命を思うのと、音楽の一音一音、そして小さな変化を大切にしながら演奏するのは同じように尊いものだと、心から感じるこの頃です。
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2024 年 12 月 17 日(火)14:00
BEATA コンサートシリーズ 60
J. S. バッハ無伴奏チェロ組曲と その周辺
富田牧子(チェロ)
【曲目】J. S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV 1007
第4番 変ホ長調 BWV 1010
ヴィターリ、ガブリエッリ 、A.キューネルの作品
【場所】BEATA オルガン練習室
◇有楽町線「江戸川橋駅」2番出口6分 ◇東西線「神楽坂駅」2番出口9分 ◇目白駅から都バス白 61 新宿駅西口行き
「山吹町」下車2分
各回20席限定・要予約 4,000円
【予約】BEATA (ベアータ) 03-6317-8916 e-mail: beata@ab.auone-net.jp
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