核兵器禁止条約が今日、発効されました。核保有国が参加していないから、傘の傘下にいる自分たちの国が参加しないという理由は、人類の平和と地球の環境−−生きるものの「命」の存続に対して消極的で、責任を持たないように思えます。
コロナウィルスが早く収まるよう祈るしかない中で、生活が困窮している人や食料や家のない人を助ける人々。休む間もなく病院で働く人々。
世界中で同じ祈りと思いが強くなると、あるときタイミングが繋がることがあります。言葉や思いが身体を動かす。核兵器を地上から無くすことも、パンデミックの中で生活することも、ひとりひとりが知性を使って、祈りに加えて何か行動が必要なのだと思います。
何のために。
演奏での練習や作品は、それが作られた理由があります。
17〜19世紀前半までの通奏低音のつかない(無伴奏)チェロのための作品は、ほとんどが教育的目的に書かれたものです。練習曲=ツマラナイと思うかもしれませんけど、新しい演奏技術や音楽を様々な発想で生み出していったのが無伴奏作品です。バロックから古典派にいたる優秀な演奏家たちが、自分が演奏したり、自分の弟子に教えるために、アイデアを書き残したものです。古今東西、いつでも人は試行錯誤をして、失敗を繰り返し、小さな発見(本人にとっては大きな発見!)に喜びながら人に伝えて行くのでしょう。
チェロの演奏家ではなかったけれど、J.S.バッハのチェロ組曲も同じです。20世紀にチェロの巨匠たちが立派な演奏して、拝むような曲になってしまいました。でも、この時期の他の作品と比べると、やはり音楽的な内容は充実していますよね。演奏していると深い満足が得られるのは、作曲した人間の精神とインスピレーションが伝わるからでしょう。
さて。
バッハが息子フリーデマンのために書いたクラヴィーア小曲集(この場合のクラヴィーアとはチェンバロ、クラヴィコード、オルガンなど鍵盤楽器の総称)から、インヴェンションとシンフォニア。ピアノを習う人ならかならずといっていいほど弾く曲。このそれぞれ独立した2声と3声の旋律を弾くことの難しさ!
バッハはまえがきにこう書いています。
「2声を正しく弾くことで、さらに3声のオブリガートを十分に弾きこなし、また同時に優れた着想を発展させ、カンタービレの奏法を学ばせ、作曲を試みる能力を持たせる」
カンタービレ(歌うように)で鍵盤楽器を演奏する、というのは興味深いことです。
それなら、弓で弾く弦楽器で演奏したらどうでしょう?
2声をそれぞれヴァイオリンとチェロで弾くのは楽しいことです。曲によっては鍵盤的なパッセージが弦楽器には難しく感じるものもありますが、弓でアーティキュレートすると新たな気づきがあります。
3声ならもう一人ヴァイオリンかヴィオラに加わってもらえばいいのです。そんな仲間が近くにいるといいですね!
そして、鍵盤楽器の練習は演奏技術の向上だけでなく、作曲を学ぶことでもありました。この豊かな着想による音楽で、勉強が楽しくなります。
ついでに、ヴァイオリンとチェロの二重奏で弾くと面白いだろうというバッハの他の作品。
クラヴィーア練習曲集第3巻Klavierübung IIIから、4曲のデュエットDuett BWV 802-805。チェロにとっては練習を必要としますが(笑)
ヴィオラも加わる3声なら、さらに弾けるレパートリーが広がります。
近い将来にデュオレッスンでも取り上げられるといいな、と夢見ています。