2024年10月01日

祈りと音楽

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長野県北部は秋らしい空気になってきました。夜は16度、ドングリが音を立てて落ちてきて、木の葉も色が変わり始めています。あんなに高温多湿で息苦しかったのが嘘のよう。
黄金色の田んぼを見るのは幸せな気分になります。新米が並び始めています。
自然界は静かに、刻一刻と変化しています。

能登半島の豪雨災害はなんと痛ましい・・・世界のあちこちで自然の力の恐ろしさに打ちのめされている私たち。強欲な人間の作り上げてきたシステムに、自然界の見えない力が「もう我慢ならない」と憤っているのでしょうか。

説明のつかない、でも確かに心を慰めて温かく包み込んでくれる、ホッと安心させてくれる「何か見えない力」を持つ人は、いつの時代もいるものです。
文字を読めず、教育を受けることのできない人が多くいた頃は、知識のある「物知り」だけではなく、不思議な力を持つ人がいることを信じていたのではないかと思います。そういう人が権威(人間の支配者、統治する組織)によって「魔女」と恐れられたり、処刑されたりする危険もあったでしょう。人間は弱くて恐ろしい・・・。
高学歴でなくても実に多くのことを知っている人がいます。生きて行く上での知恵とか、世界の歴史や文化、地理、言語、文学、生物のこと。機械を修理できたり、楽器を弾いたり、本を読んだり、勉強したり。有名な学校を出なくてもあることに秀でている人はいます。素晴らしい能力を持っているかどうかを判断する力を人間が持っていないだけで、その人の能力は計り知れない。

ビンゲンのヒルデガルトは、天から啓示が与えられ、ヴィジョンが見えた、という稀有な人です。ただ何もしないで待っていた訳ではなく、聖書や書物を読み、真実を求め続け、学び続けているうちに。
教えられなくても、そのものになりきることで、できてしまうということもあるだろうと思います。
能力や理解というのは説明ができない。
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最近の祈りと音楽の話を二つ。
心身にダメージを受けた人の癒しのために行われた小さなミサで、ヒルデガルトの音楽を演奏する機会を与えられました。カトリックのミサでは式の流れの中に音楽がなくてはならないものとして存在します。詩の意味の通り、弾きながら体の奥底から喜びが湧いてきたのは不思議な、でも、とても自然な感覚でした。ミサで奏楽するのは初めての経験で、ヒルデガルトはそのための音楽でもあり、司式をされた神父から「祈りと音楽が一体となった」と仰っていただけたのは本当に嬉しいことでした。

プロテスタント教会の永眠者記念礼拝で、牧師自身が心の奥に深い悲しみを抱き、心が泣いている様子があまりに辛かったので、翌日、牧師を訪問してチェロを弾いて差し上げました。毎日ギリシャ語やヘブライ語やドイツ語で聖書を読みながら勉強している、この物静かで、謙虚で、とても控えめな牧師は、ご自身のことをあまり語らないけれど、10代の頃にギターを弾きながら作曲をなさったことを話してくれました。「天から降りてきた」短いメロディがたくさん書かれた古いノートを見せてくれました。

啓示はヒルデガルトのような特別な人にだけ現れるのではないのだろうと思います。
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2022年04月18日

終わりははじまり、いのちの源泉

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京都の美術家、木坂宏次朗氏の個展が4月24日(日)まで大津市のギャラリー2kw galleryで開催中です。ギャラリーのサイトはこちら
木坂氏が制作の源泉にしているT.S.エリオットの詩。エリオットの『四つの四重奏』の世界観から、闇と光、そして、終わりは出発の地である静止点、という同じテーマに視点を置いて制作し続けていることに敬意を表します。エリオットの詩の朗読と音楽による小さな試みのお誘いを受けました。23日に行われる予定。

4つの季節。万物を造る土、水、空気、火の四大元素。
有機的な命あるものは螺旋を描いて時間の中で動き、新しく生まれ変わっていく。それは音楽。終わりの点が初まる時に見えている。
「現実的欲望からの内的な自由、行為と苦悩からの解放、
内的な、そしてまた外的な強制からの解放、
しかも、まわりは、感覚の恩寵に、静止かつ動く白い光輝に、囲まれている」(T.S.エリオット"Four Quartets-Burnt Norton")
この文そのものを感じるヒルデガルト・フォン・ビンゲンの音楽、
「めでたしマリア、いのちの泉」。
裏切られ、軽蔑され、十字架に架けられ死ぬ運命の、その命を産んだ方。

受難週でも復活祭の礼拝でも、今の戦争に全く触れない説教の場にいて、復活とは、その喜びとは一体なんなのだ、と悲しく、晴れない情けない気持ちでいっぱいだった。ヘラクレイトスの断片「ロゴスこそ遍きものであるというのに、多くの人々は、自分独自の思慮を備えているつもりになって生きている」という言葉に・・・反省。
「はじめに言(ロゴス)があった。言は神とともにあった。・・・万物は言によって成った」
世界の終わりは世界のはじまり。古いものと新しいものが入れ替わり、人の心の中で悪が善に、より善いものに生まれ変わりますように。闇が光に気づくことができますように。
1日でも、1分でも1秒でも早く平和が訪れますように。

2020年04月11日

休みのあいだに

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人が焦っているのだろうか。気持ちが落ち着かないのだろうか。感染症の影響で緊張したり、不安があるのに、ご近所さんのお嬢さんが事故に遭って入院。この日は受難日だった・・・。

外出を自粛している今は、することがなくて暇を持て余しているわけじゃない。
普段からそうなんだけれども、緊急時にこそひとりひとりが情報を得て、よく考え、選び、権力を批判できるのがいい。感染症対策の対応が遅いし、明確でないし、責任を負うことを避けるし、色々おかしいことが政治で行われているときに、自らが権力任せにならないように。コロナ対策でおおわらわの筈が、重要な法案が通ろうとしていることも!
そして、今、世界中で困難な状況におかれている人たちが、コロナの影響でますます厳しい状態になっていることも忘れないでいたい。

音楽家の遺した本を処分する前に、読みたいものをピックアップしていたら、だいぶ英文の読み物が集まった。
いつか読もう、と溜めている本や文章は家にもたくさんあるので、このコロナ休みの間にまとまって勉強をしたい。
練習して、勉強して、散歩して。やることはたくさんある。
それだけで1日が過ぎて行くだろう・・・
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直接その人に与えられた(その人が理解した)イメージやメッセージ、言葉、音楽は、その人の体験だ。ヒルデガルトが地球の動きを、そして宇宙を見た(感じた)ように。そこから考え解釈したものが文章や絵として後世に残り、今私たちは見たり読んだりできるのだけれども。
残された目に見えるものから追体験し、精神を得ることが可能になる。
そういう意味で、私は体験する、ということを渇望する。
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ヒルデガルトの見た幻視。(Oxford University Press "Early Music", August, 1998)

2019年03月15日

ヒルデガルトの旋律と楽器の共鳴

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ヒルデガルト の音楽のC(ド)を基とする調の曲をチェロで弾くと、A-D-G-Cの開放弦のうち、CとDの響きが残ってぶつかり合い、まるでシンギングボールのうねりのように、わんわん耳元で鳴ります。リューデスハイムの聖ヒルデガルト 修道院で聴いた、教会堂の奥のドームで歌う修道女たちの歌の響きを思い出します。
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彼女の曲は共鳴し合うように書かれているのです。音と音、声と声、人と人、楽器と楽器。地球の調和、宇宙の調和。
彼女が作曲したわけではなく、短い曲も長い曲も全て、聴こえてきた旋律。
時空間を超えた気分を味わいます。この世の忙しい時間を忘れて気持ちが安らぎます。
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2018年03月01日

3月4日羊とヤギライヴ!プログラム

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流れるように続いていくプログラムです。
「水」のテーマから、ヒルデガルトの曲は、女性に閉ざされていた門が開かれ、傷つき苦しみの中から生命が与えられた、その柔らかく輝く喜びを表した内容を選びました。

ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098-1179):おお、魂の牧者よ
カンティガ[聖母マリアの奇蹟を讃える歌](13世紀)第10番「薔薇の中の薔薇」
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:おお、血の赤さよ
カンティガ 第119番「悪魔の誘いに従えば」

ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:仲立ちの若枝よ
セイキロスの墓碑銘
ブルガリアのリズムの即興
パーカッション即興
ブルガリアのダンス「ブチミス」

ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:いまわれらに開かれたり
C.ジェルヴェーズ(16世紀):イギリス風パヴァーヌ
作者不詳(16世紀):レのパヴァーヌ
J-B.リュリ(1632-1687):『平和の牧歌』より 四季のパヴァーヌ
J.ダウランド(1563-1626):涙のパヴァーヌ「流れよ、我が涙」
A.オネゲル(1892-1955):独奏チェロのためのパドゥアーナ

ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:紫衣をまとった王の若枝と王冠よ、あなたは甲冑のように閉ざしておられる

A.ペルト(1935- )「フラトレス」からの即興
カタロニア民謡:鳥の歌

ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:おお、魂の牧者よ

2018年01月25日

音楽は生き返らせる

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Spiritus sanctus vivificans vita 聖霊は生の源の生。

言葉に霊(魂)を吹き込むのが音楽、とヒルデガルトは言っています。そして肉体も魂がなくては動くことができません。
この聖霊への歌の歌詞は簡潔で力強い内容で、励ましてくれるようです。

音楽は命を生き返らせる。
万象を動かし感動させ、全ての被造物の根源で、万物の汚れを洗い清める。傷に油を塗って癒してくれる。
そのようにして、魂は輝き、生命を勇気づけ目覚めさせ、万象を何度も生き返らしてくれる。

感動することは生き返る元なのかも!

2018年01月24日

シリーズ「ヒルデガルトによる四大元素のハーモニー」

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チェロとパーカッションのデュオ《羊とヤギ》による、中世の女性神秘家ビンゲンのヒルデガルトの音楽と四大元素(土、水、火、空気)の思想からイメージを得た、全4回のシリーズです。
地球上で起こっている人間が関わる出来事や環境と、私たちの身体とのつながりを探っていきます。人間の事情や驕りによって見えないものや隠れているものを、太古から連綿と活動している自然のなかに見つけて音にしてみたいと思います。そうやって生まれる音楽は命を土台とし、想像力を膨らませ、創造し続け、人の心や物事の内面を豊かにするものであるようにと願います。
空間に音が響き、身体に伝わり響き合う。その時々に生まれる新しい音楽を、聴き手も弾き手も身体で受け取り、元気になったり力を与えられ心身が生き返る。
音楽することは生きること!
《羊とヤギ》の音楽で、音やリズムが呼吸とともにあるのを体感する時間を、ご一緒に過ごしませんか。
ぜひご都合のいい日に、もちろん毎回でも!お越しください。

ニューイヤー《羊とヤギ》サンドイッチ・コンサート
「ヒルデガルトによる四大元素のハーモニー その1 プロローグそして“土 terra”」
2018年1月28日(日)午後2:00
(1:45開場)

第1回は「プロローグと”土”」です。
地はそれぞれの生き物を産み出す。土は肉体を町を強固にする。土から生まれ、土に還る。生の始まりであり、終わりには地に横たえられる。
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【プログラム】
J.S.バッハ:ミュゼット、ガヴォット、ジーグ
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:「おお魂の牧者よ」、「おお永遠の力」、太祖と預言者に「おお豊かな実りをもたらす根よ」、「聖霊は生の源の生」、「顔を赤らめし時に」
H.パーセル:ディドのラメント「わたしが地中に横たえられたとき」
トルバドゥールのP.ダルヴェルニュ:「日の短く夜の長くなる頃」
B.バルトーク:トランシルヴァニアの夕べ〜(ハンガリー民謡)黒い大地〜ジュラの野原で〜ケルトメグの野原で〜(『こどものために』より)兵士の歌〜豚飼いの踊り〜(2つのヴァイオリンのための44のデュオより)バグパイプ〜(ルーマニア民俗舞曲より)速い踊り
Z.コダーイ:無伴奏チェロソナタより第2楽章
パーカッションソロ
ブルガリアンダンス

【場所】エナスタジオ(代官山)
【料金】一般3500円(当日4000円)、中学生以下2000円、未就学児無料
🍸終演後にドリンク(ワインあり)と美味しい軽食つきパーティがあります。
🍴参加費:1000円
【予約】☎︎03−6317−8916(ベアータ)
MA企画 kikaku_ma☆yahoo.co.jp(お手数ですが☆を@に変えてタイプしてし直してください)
💡チラシはこちら20180128エナ表.pdf

羊とヤギライヴ!「ヒルデガルトによる四大元素のハーモニー その2“水 aqua”」
2018年3月4日(日)19:30
(19:15開場)

第2回のテーマは「水」。
水は地下から湧き出でて土の面を潤す。つねに流れている水。生き物の体内を流れる血のように、止まることのない地球の動きや時間のように。
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【プログラム】
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098-1179):「おお、血の赤さよ」ほか
A.ペルト「フラトレス」からの即興
A.オネゲル(1892-1955):パドゥアーナ
民謡、パーカッションソロ   ・・・他
【場所】 府中グリーンプラザ 第1音楽練習室 地下2階(京王線府中駅北口)
【料金】一般前売2800円[当日3000円]当日料金は無しに変更しました、ペア5000円、高校生1000円、小・中学生500円、未就学児無料
【予約】MA企画 kikaku_ma☆yahoo.co.jp(恐れ入りますが☆を@に直してください)
💡チラシpdfはこちら
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20180304羊ヤギ府中チラシ裏.pdf


羊とヤギライヴ!「ヒルデガルトによる四大元素のハーモニー その3“火 ignis”」
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン「おお、火のような聖霊よ」

羊とヤギライヴ!「ヒルデガルトによる四大元素のハーモニー その4“空気(風) ventus”」
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン「おお、英知の力よ」
A.ペルト「フラトレス」からの即興、鳥の歌
C.モンテヴェルディ「西風が戻り」

2017年12月18日

環のように回る

おお、英知の力よ、
あなたは弧を描いて巡り、
すべてをひとつの道に、
いのちの道にまとめる。

「SCIVIAS道を知る者」の基礎となる、環のように回る回転のイメージの詩。

2017年11月28日

四大元素シリーズのためのprologue for Hildegard's four elements

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「世界における人間の活動は、ビンゲンのヒルデガルトによれば徹頭徹尾芸術的な本性を持ち、技術的に規定されるよりも、むしろ音楽的に調律されている。」

「ヒルデガルトの異常なまでに広範に成し遂げられた文学的な仕事(創造)は、彼女の芸術的活動とほとんど分離不可能なものである。この芸術的活動は、神と世界をめぐり、すべての創造と賛美、すべての行動と苦悩をめぐるあらゆるテクストを貫いており、そのもっとも美しい表現はヒルデガルトの聖歌集(Symphoniae)に見いだされるのである。だからこそ我々はことさらに、この聖歌集に戻ってこなければならない。そしてそれは一見日常の非常に平凡な行いをも真に詩的な仕方で、鳴り響かせる芸術的活動なのである」
〜「ビンゲンのヒルデガルト」シッペルゲス著より

《羊とヤギ》CD「O Terra(大地よ)」製作のきっかけでもあるヒルデガルト。第一弾は四大元素のうちの「土」、すなわち大地がテーマでした。今後、どのくらい時間がかかるかわかりませんが(アイデアはあっても、とにかく器用にいかないもので)、「水」「火」「空気(風)」と進めて4部作にしたいと夢見ています。
が、具体的な内容が降りてくるのにもう少し時間がかかりそうです。
まず、来年のための企画中のプロジェクト、「ヒルデガルトの思想による四大元素シリーズ(仮題)」をやってみるつもりです。
そのプロローグとして、彼女の言葉を取り上げていきます。


「世界を構成するすべての元素は人間の内にもある。そしてそれらと人間は共働するのである。それらは火、空気、水、土という名を持っている。この四大元素において、そのどれもが他より分離されない形で結びついている。それらは全体的にこの結合のなかで硬く結びついているために、人はそれを『天空』と呼ぶのである。つまり、宇宙の堅固な構造と」

身体のどこをとっても部分で成り立たない。自然界も、人も、社会も。世界中それぞれの国もそれだけで存在できない。それぞれが関連している。
地球は土と水に覆われている。人間は土から生まれ土と共に生き土へ還る。農作物を育てる。
水は大地も乾燥した肌も湿らせる。生き物の体内に血が流れる。水は滞りなく流動する。洪水はすべてを飲み込む。太陽はそれを乾かす。
火は身体をあたためる。料理し、明るくする。晴れた日は生き物が活発に動く。太陽のおかげで洗濯物もよく乾く。草木を元気にする。
呼吸。新鮮な空気を吸う。塵を吹く。風で飛んでいく。
人間が自然を、宇宙の運行をコントロール下に置くことはできない。人はその力に委ね、導かれているだけ。

紀元前の哲学者は音楽を宇宙の調和(天空の音楽)とみなしていた。
宇宙のすべてのものを創り、人間を導く大いなる存在。
それを賛美するために歌はなくてはならない。万物を構成する四元素のそれぞれは役割や音響を持ち、ひとつに溶け合って(調和)世界のハーモニーとなる。人の内部で響き、調律されて、他者とともに歌い響きあう。人間が歌う賛歌は、天使の歌う「天上のハーモニーのこだま」となる。
なんて輝かしいイメージ!天上のラッパが鳴り響き、金色の光が拡がっていくのが見えるよう・・・。

「火は炎を持ち、神を褒め讃える歌である。そして風は炎を動かし、神を讃えるために吹く。そして声は言葉であり、それは褒め讃える歌である。こうして創造の全体が神を讃えるただひとつの歌なのだ」

「彼ら(天使たち)は壮麗な声の生き生きした響きによって告げ知らせる。その声は、海辺の砂の数より多く、大地が不断にもたらす果物のすべての数にまさり、すべての命がもたらすあらゆる響きよりもさらに豊かで、日輪(太陽)、月輪(月)、星辰(星々、星座)によって水にきらめく耀きよりもさらに明るい。この響きは四大元素[土、水、火、風]を高く支え、しっかりと組み合わせる風の轟きから立ち起こるエーテルの音楽よりもさらに壮麗なのである。それにもかかわらず、これら至福の霊たちでさえ、このような歓呼の声のすべてをもってしても、神をとらえることはできない。だからこそ彼らは再三人間の声のなかに新しいものを発明・追加するのである」

2017年11月06日

ヒルデガルトから学ぶこと

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ヒルデガルトは幼いころから身体が弱かったそうだ。天の大いなる方は彼女の体調と全く関係なく、容赦なく様々なヴィジョンを与えた。
そこから気づかされるのは、人が仕事をするとき、また他の人を助けようとするとき、私の体調や状況は問題ではないということ。私の状態が万全なとき、準備万端なときに、相手を助けることができ、いい仕事ができインスピレーションを得るのは当然なこと。
人間である以上、他者との関わりで創作活動があり、対象の人と関わる中で霊感を得ていく。

彼女は「異言」を語る。自分の意思ではなく、天からの言葉が口をついて出る。彼女は自分の舌が発していることが解らない。それは人間界の言語ではなく「音」であることもある。天はその言葉を注釈し、ただ彼女の舌が動き、それを側にいる修道士が忠実に書き表していったという。
そういう人の周りには献身的に援助する人々がいるものだ(彼女がその存在にどう接していたかは知らない)。
人間が行う芸術や創作活動は、いや、すべての活動は、人間の言語に置き換えなくてはならない。つまり地上の人の間に通じる方法や言語で活動し表していく。本質を見えるようにするために、解釈し言葉にしていかなくては、特別な賜物を与えられた者の驕りだと思う。
全ては解らない、誰も解らない。解釈が正解かどうかもわからない。誤解もある。思ったように伝わらない。
それでも理解し伝える努力を続ける。


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