2022年08月13日

秋のバロックチェロ デュオコンサートのご案内

KIMG3394.JPG
残暑お見舞い、そして大雨被害に遭われた方々へお見舞い申し上げます。
生息するだけで精いっぱいという感じの夏です。様々な心配事が尽きない毎日。ロシアによるウクライナ軍事侵攻も終わりが見えず、食料やエネルギーや核の問題も生活に関わる身近なものになっています。
原発をやめて、家やマンションの屋根にソーラーパネルを張れるよう国が全て負担し、自治体で電力を自給自足することは可能ではないのだろうか、と世の中の金儲けの仕組みを知らない人間は思います。最近被害が甚大な大雨を、雪国では大雪をエネルギー源にできないのだろうか・・・。石油、天然ガスや石炭も持続可能な選択ではないですからね。運ぶのにお金がかかるし。同じ地球上で、食べ物がない人や住む家のない人がいて、一方で食べ物が大量に捨てられ、住む人のない家がたくさんある。作ったものを大事にしないだけでなく、戦争によって破壊し続ける。核戦争になったら破滅だとわかっていながら、核によって防衛、という大いなる矛盾。人間の欲は捨てられないから解決しない。そうやって人間は地球を破壊し続けていくのでしょう・・・。のっけから救いのない話で申し訳ないですが。これから地球や人類が継続していくためには、既得権益と関係なく食料やエネルギーを作っていく方法しかないのではないかと思います。
学問もスポーツや芸術も、競争や勝ち負けではなく、そのものを個人が、またはお互いにともに楽しみ、質を高めて中身を追求していくことができれば、誰にとっても不幸を招かないのではないかな。

7月31日に開催したバロックチェロソロの小さなコンサートには、とても気温が高く、コロナ感染が拡大しているにもかかわらず、ご予約いただいた方々皆さま(10分前に集まってくださって!)お越しいただきどうもありがとうございました。日々準備する中で発見があり、本番で弾くたびに毎回気づきがあり。演奏には終着点はありません。特にバロックの音楽の演奏家は、それぞれお互いに学び合い刺激しあいながら活動しています。私はヨーロッパでの最新の研究による演奏活動に直に触れていないので、楽譜や楽器や文献や情報から勉強し、同業者に教えてもらいつつ、自分の認識を少しずつ確認しながら進むほかありません。ほんの小さな気づきが大きな違いとなる、その喜びが表れる音楽をしたくて、聴いてくださる方々とともに音楽に感動したくて、長年自主企画を続けています。その成長過程をずっと聴き続けてくださるお客様に本当に感謝です。

さて、昨年11月末に東京の近江楽堂で共演したバロックチェロの橋弘治氏と、今秋11月19日(土)に長野県安曇野市のあづみ野コンサートホールでデュオコンサートを開催します。
北イタリアでチェロが誕生し、イタリアのチェリストたちがイタリア(当時はもちろん今のイタリアのように統一された国ではなかったけれど)各地、ヨーロッパ主要都市で活躍し、他の国のチェリストたちも含めてパリでどのようにチェロが発展していったか。フランスではルイ14世亡き後、王宮の外で音楽が演奏される機会ができて、市民が芸術を楽しむようになった頃。北イタリアのトリノ出身または当地で活動したチェリスト、その中からフランスのパリに到着して活躍した多くの優れた演奏家あり、パリで楽譜を出版した人あり。
チェロ独奏と通奏低音のための作品や、2つのチェロのための作品を、2つのチェロでお届けします。
中信、松本近隣の皆さま、「おはなしコンサート」がキャンセルになって以来の企画、お待たせいたしました!首都圏の皆さま、東京では開催しませんので、よろしければぜひ秋の安曇野へ!バロックの楽器に向いたキャパシティと響きのホールで、アンサンブルがお楽しみいただけると思います。
お越しいただけましたら幸いです。
MA企画に11月17日までにご予約いただいた方には、一般4500円のところ500円割引いたします。メールまたはお電話にてお申し込みお待ち申し上げております。8月22日にMA企画にてチケット販売開始です。ホールでのチケット販売は9月以降になります、ご了承くださいませ。

橋弘治 富田牧子 バロックチェロ デュオコンサート“イタリア・トリノからフランス・パリへ”
11月19日(土)14:00 開演 (13:30開場)
【場所】あづみ野コンサートホール[長野県安曇野市穂高3987-8]
【料金】一般 4,500円/学生 2,000円[学生券はMA企画のみ販売]
【主催・予約・問合せ】MA企画📩 kikaku_ma☆yahoo.co.jp 恐れ入りますが☆を@にタイプし直してください 。 [メールでのご予約は11/17(木)まで]
☎ 03-6317-8916(ベアータ) MA企画にて8月22日チケット販売開始
【チケット取扱い】あづみ野コンサートホール ☎ 0263-82-6419
【プログラム】
A. M. フィオーレ(ca.1660-1723):シンフォニア 変ロ長調
G. B. ソミス(1686-1763):ソナタ 第2番 イ短調
J. P. ギニョン(1702-1774):ソナタ 第5番 ニ長調 作品2
J. B. バリエール(1688-1748):ソナタ 第4巻 第4番 ト長調
J. B. マス(ca.1700-ca.1757):ソナタ 第4番 ホ短調 作品1
S. ランツェッティ(ca.1710-ca.1780) :ソナタ 第7番 ト長調 作品1
20221119celloduo安曇野-表.jpg
20221119デュオコンサートチラシ表.pdf
20221119celloduo裏_元.jpg
20221119デュオコンサートチラシ裏面.pdf
posted by makkida at 22:49| 17、18世紀のチェロ音楽 | 更新情報をチェックする

2021年09月05日

17〜18世紀フランスのチェロ音楽

KIMG2687.JPG
いつもそこにあるのに毎日違う表情を見せてくれる自然。スゴイなあ・・・

11月26日に予定しているバロックチェロのデュオコンサートでは、18世紀のパリを舞台に活躍した音楽家などの作品を集めてお届けします。
イタリアとフランスのバロック音楽、バロックのことをそんなに知らなくても違いが感覚でわかります。
でも知るともっと面白い。
具体的に何が違うのか。
国がどのように成り立っているか、政治体制です。
20世紀前後の頃にも、フランスの音楽家は「フランス的なもの」を強く意識して作曲し文章に残しました。
17世紀のフランスではルイ14世が音楽・文化に対して力を持っていました。熱心な音楽愛好家というより権力者です。16世紀から流行したバレエ(オペラ・バレエ)、その中で舞踏を王自らが踊った。いや、むしろ、王が踊るためにお抱えの音楽家に作曲をさせました。
フランス様式、フランス趣味とは、ルイ14世の趣味ということです。
パリからヴェルサイユに、すべての雇い人、貴族たちを連れて移動し、公務を行ない、宮殿で芸術活動を行った。貴族たちが自分の領土(地方)で力をつけないように、自分に歯向かえないように、ヴェルサイユに囲ってしまったわけです。貴族たちの日常生活に音楽や踊りは欠かせないので、当然、宮廷音楽家も一緒に。
想像しただけで、肉体的にも精神的にも、ものすごく窮屈です。
一見華やかで優雅、軽やかな音楽の裏にどんな生活があったか。トイレのない、不衛生な宮廷で、香水まみれの王侯貴族。
少年の頃にイタリアからフランスに来たリュリは、ルイ14世の宮廷音楽家として活躍しました。彼が行う仕事の内容は、王の趣味に合う音楽を作り、その趣味に従った演奏法を合奏(オーケストラ)のすべての団員に伝えて演奏することでした。その演奏法とは、例えば、多種多様な装飾音をどのように演奏するのか、細かな違いを弾き分けること。ヴァイオリンのボーイング(弓遣い)を揃え、舞曲のリズムを合わせること。
この頃の宮廷ではヴィオールが好まれており、マレなどの名手も活躍していました。24人のヴァイオリンのアンサンブルはあったけれど、チェロはまだ。何しろ、1740年になっても、ヴィオールの繊細さと優美な運弓(ボーイング)を賞賛する論文『ヴァイオリンの侵略とチェロの野望に対するバス・ド・ヴィオル擁護論』が書かれ、チェロは「惨めで貧しい、悪魔の楽器」と散々なことを書かれていますから・・・ヴァイオリン属はフランス趣味では「優雅」でなかったのでしょう。

一方、イタリアは中央集権ではありませんでした。あちこちの地域(支配するのは領主、ローマ教皇)が分かれていた。
イタリアのバロック音楽は自由な装飾、即興が必要です。
17世紀後半に「大きなヴァイオリン」のうちで大きすぎない小型の低音楽器VioloneヴィオローネをVioloncelloヴィオロンチェロ(小さなヴィオローネ)と呼ぶようになり(今のチェロです)、市民権を得たチェロは通奏低音だけでなく、独奏楽器として育っていきます。ボローニャで生まれ、他の都市、外国へと広がります。特にナポリのチェリストは外国に移住する人が多く(政治的なものも理由のひとつか)、有名なボッケリーニもパリやスペインで演奏活動をしました。
18世紀初めにはフランスのチェリスト、バリエールもローマで学び、その後の作品にはイタリアで受けた影響が色濃く現れ、より技巧を駆使した内容になります。

さて、ヴェルサイユに王侯貴族が行っている間、パリの上流階級や商人、市民の中から文化を享受したい欲求は生まれていたでしょう。17世紀初めにはすでに街の本屋が文芸誌を初めて刊行、2番目に古い文芸誌がMercure de France。19世紀の間に一時期無くなっていましたが今もまだ存続しています。
宮廷生活の紹介や貴族のファッション、詩、歌、結婚情報、芸術・音楽批評が掲載されていて、ここに取り上げられるということが流行の証でした。地方や外国に広める役割もしたのです。
 18世紀に入ってルイ15世の治世下、彼はイタリア音楽を愛好しましたから、イタリアから新しい音楽はどんどん入って来ます。フランソワ・クープランはルイ14世の時代からイタリア音楽に関心を持ち学んでいたでしょうけれど、1724年に書いたコンセール集は「趣味の融合(和)」であり、フランス様式とイタリア様式の融合を成功させました。
 コンセール・スピリチュエルと呼ばれる公開演奏会が始まったのが1725年。王立音楽アカデミーのオーケストラが教会暦の四旬節(3月)に休みになる間、パリの人々に音楽の楽しみを提供するために始まりました。初めはラテン語で歌われる宗教作品が、コレッリの器楽作品と合わせて演奏されましたが、聴衆の大半はラテン語が理解できなかったので、フランス語の世俗声楽曲も加わるようになりました。
コンセール・スピリチュエルではバリエールやイタリアから演奏旅行でやって来たボッケリーニも出演、ボワモルティエ の作品も演奏されました。バリエールやボッケリーニの演奏会は前述のMercure de France誌で称賛されました。
もう、こうなると、市民が共有する文化ですよね!

数年前にフランスの著名なオルガニストの公開レッスンを聴いた時、彼が「日本人の演奏家はフランス革命以前の音楽はよく弾ける」と言っていたことが印象深いです。ここでは革命は現在に至るまで経験していませんから・・・。
シビアに考えると、革命前の「恐ろしい」独裁の音楽ですら本当に理解するのは難しい。
今、その当時通りに演奏するならば・・・権力者の趣味に合わせた弾き方を理解した、権力者に気に入られた指揮者の指示通りに演奏する・・・ということだとしたら・・・震えるほど怖いことです。

チェロが急速に発展した時期と、フランスの市民の社会活動が活発になった(それが革命へと繋がるのでしょう)時期が重なるのは興味深いことです。楽器の性格上、想像ができますが。
チェロの歴史を知ることは楽しく、勇気付けられるようです。

バロック音楽をヨーロッパで学び演奏活動をして来た高橋弘治さんと、2つのチェロによるコンサートができるのはワクワクします。
どうぞお楽しみに!

橋弘治 富田牧子 バロックチェロ デュオコンサート
”フランスの系譜”

2回公演 15:15[15:00開場]/19:00[18:45開場]
【場所】近江楽堂(東京オペラシティ3階)
〜18世紀パリを舞台に活躍した音楽家の作品を集めて〜
F.クープラン、J.B.ボワモルティエ、J.B.バリエール、
G.F.サッジョーネ、L.ボッケリーニ など
【チケット】一般前売¥4000[当日¥4500]/ 学生¥2500 好評発売中!
【予約・問合せ】☎︎03−6317−8916 ベアータ
【企画・予約・問合せ】MA企画 kikaku_ma☆yahoo.co.jp(恐れ入りますが☆を@にタイプし直してください)
💡チラシはこちら
celloduoチラシ表.pdf
20211126チラシ裏面.pdf
posted by makkida at 00:12| 17、18世紀のチェロ音楽 | 更新情報をチェックする

2021年03月15日

独奏チェロの変遷@チェロ誕生(バロック時代半ば)

KIMG2409.JPG
信濃町も雪が溶けて、オオイヌノフグリや福寿草が咲き、蕗の薹が出てきました。家の周りもだいぶ雪がなくなり、土が現れました。

さて、独奏チェロのための作品の移り変わりを、楽器の生い立ちや作曲家などとともにご紹介していこうと思います。シリーズの第1回。今回は、チェロが生まれたバロック時代半ば、17世紀後半のお話です。

まずバロックチェロについて。と言っても、本体は現代の楽器と同じです。バロック時代、当時使われていたスタイルに調整されたもの、という意味です。
現代の楽器と並べて比べるとわかるのは、まず指板(左指で抑える場所)の材質。木の種類が違います。現代の楽器には黒檀が使われます。これは重い木材です。一方、バロック用に調整された楽器には、もっと軽い木が使われます。楽器に負担がかからない方が音が軽くなります。
楽器全体が軽くなると、バロック音楽の特徴であった、言葉を話すように演奏する、ということがやり易くなるのです。よく響く宮廷の部屋(サロン)や教会(聖堂)で演奏するときには、音量よりも明瞭にアーティキュレート(はっきり発音する。音節(シラブル)に分ける)することが大事です。
それから、指板の長さがバロックの方が短いです。18世紀終わりから現代に至る音楽では、高い音域をよく使うので、長い指板が必要となります。
そして、ネック(竿)の角度が違います。現代の方が角度がついています。バロックの方が平らに近い。角度がついていると、弦を張った時に楽器にかかる張力(テンション)が強くなります。張りのある、フォーカスされた(焦点の合った)音になります。

実際に楽器を抱えて演奏するとすぐに気がつくのは、現代のチェリストが楽器の下から伸ばす棒、エンドピンを床に刺しているのに対して、バロックの奏法では両膝の間に挟んで弾きます。

それから、弦ですが、当時の弦楽器には羊や牛の腸をよって作ったガット弦を張っていました。20世紀以降、現代のチェリストの多くはスチール弦を張っています。私はモダン調整の楽器にもガット弦を張っていますが。ガット弦は伸びるのに時間がかかりますが、スチール弦は新品をすぐに張って音を出せるので便利です。効率的な弦や楽器は忙しい現代社会で求められるのかもしれませんが(人間がそれに合わせているのでしょうが)、音色や音質の面で失われるものも多く、音楽の本質的なところで大きな違いがあります。

この低音楽器が、一般的にチェロと呼ばれるようになったのは、1600年代終わりのことです。それ以前にも、もちろん、弓で弾く大型の低音楽器はあり、バスヴァイオリン、ヴィオローネ、バセットなどと呼ばれ、今の「チェロ」より大きなものなどサイズは色々でした。低音楽器は、他の楽器との合奏でバス(低音)パートを担当しました。その中に現代のチェロの様にテノールパートを受け持つ楽器もあり、華やかな装飾的な音形を弾くこともありましたが。
主に伴奏楽器だったチェロの前身が、次第に独立し、独奏作品も演奏するようになったのは、北イタリアのエミリア・ロマーニャ州のボローニャで巻き線の弦が開発されたのがきっかけです。ガットを芯にして、そのまわりに金属の細い線をきつく螺旋(らせん)に巻いたのが巻き線です。
この巻き線のお陰で、低い弦が、プレーンガット弦より短くても、そして細くても、同じ音程を出せるようになりました。つまり、楽器のサイズが小さくても低い音が出せるようになったのです。

そして、ボローニャやその近郊ではチェロ奏者が活躍し、独奏楽器としての地位を確立します。チェロ奏者が自分で演奏するだけでなく、教えるための作品が次々に生まれます。

続く
posted by makkida at 23:58| 17、18世紀のチェロ音楽 | 更新情報をチェックする
当サイトの写真、記事の無断転載・無断使用はご遠慮ください。 Copyright 2022 Makiko Tomita Kida, all rights reserved.