2025年02月14日

J.S.バッハの無伴奏組曲とその周辺

IMG_20250210_085431.jpg
2024年の12月にBEATAコンサートシリーズで急遽ソロコンサートに変更して行った際、「J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲とその周辺」の題名をつけました。詳細はコンサートご案内の記事に書きましたが、器楽曲はそれだけ見ていても理解が深まりません。
バロック音楽の弾き方については、現在活躍している演奏家から学ぶのでももちろんいいアドヴァイスは得られますが、過去の音楽家が残した教本を読むのが助けになります。何年間かレッスンを受ければ身につく、というものではなく、生涯自分で考えて探求していく、というのが芸術の道ですよね。
ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツの「フルート奏法」には、フルートの演奏法だけでなく、ヴァイオリンやヴィオラ、チェロ、鍵盤楽器についても詳細な演奏法が書かれています。
リピエーノ楽器(ヴァイオリン)奏者のために、もっとも大切な点を教えてくれています。
「ボーイングにより音は生命を与えられる」

どんなに通奏低音のバスが音楽に生気を与える演奏をしていても、お客さんの耳はソロ楽器にいくものです。当然、作品のアイデア、キャラクターはソロ楽器がどのようなアーティキュレートをするか、にかかっているのです。それぞれの音形を見つけて明確に弾き分けること。それは発音の仕方、つまりボーイング(弓遣い)。スラーの付け方、音の性格、など、どんな喋り方をするか。様々な種類のボーイングを練習して、曲の中でどのようなボーイングを選ぶか、考え方ですね。

声楽曲は「言葉」がついているので、ボーイングはそこからイメージができます。様々な言語はそれぞれ発声、発音が違いますから、それも含めて大きなヒントが与えられます。
バッハの教会音楽(宗教曲)に関してはもう一歩奥に進んで、言葉の意味も含まれます。どんな言葉(表現)の時にどのような和声がつくのか。バロック時代の音楽家の基礎である修辞法と合わせて考えていく面白さ。
終わりのない勉強、仕事です。

オルガン奏者はいいですね。声楽作品と直接つながる教会音楽を一人で演奏できる。
デュオレッスンのおかげで、私もオルガン作品を楽しく勉強しています。
IMG_20250214_120726.jpg
バッハの無伴奏組曲を、同時代の音楽や、バッハの声楽作品を通して見ていくと、多くの発見があるのではないかと思いますし、当時の音楽が現代の自分にもっと近くなり楽しくなります。自分(の言葉)で喋ることができれば、聴く人にも説得力のある音楽になるのではないかと。これはバロックに限らないですけれど。
発見があればあるだけ、私はその作品について知らないことだらけだ、と気づくのです。

私がプロテスタントの教会の礼拝で奏楽するときや、「平和への祈りコンサート」のプログラムの中で、ドイツ語の賛美歌(コラール)を取り上げているのも、声楽作品に全ての大事なものがあり、直接聴き手に伝えることができるからです。そして得られるものの豊かさと言ったら・・・!
作曲当時の人々は、楽譜が読めなくても教会暦のコラールを知っていたし、最新作を一度聴いたら何年も後まで覚えている人もいたし、現代の私たちよりずっと音楽を身体的に感じ取る力があったと思います。視覚や頭での理解でなく、耳から、そして身体での理解です。
芸術は説明されたから理解できるものではなく、一人一人が感じ取るものでしょう。音楽そのもので味わっていただけるような演奏を目指したい。
J.S.バッハの無伴奏組曲とコラール、という内容でも継続してあちこちで弾いていきたいと思います。

まず3月23日の京都で「J.S.バッハとその周辺」、
今年中に、「無伴奏組曲とコラール」を松本か上越でもやってみたいと考えています。
IMG_20250211_193613.jpg
posted by makkida at 15:16| J.S.バッハとその周辺 | 更新情報をチェックする

2024年12月10日

J.S.バッハとチェロ、そして無伴奏組曲

2024.12.17 牧ソロちらし.jpg
12月17日(火)BEATAオルガン練習室にて予定しているコンサート「J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲とその周辺」
論文のタイトルのようですが(笑)。当初、イタリアとフランス音楽(作曲家)の影響をそれぞれ見較べてみよう、と考えていました。
掘り進めていくうちに、「バッハはどうしてチェロのために無伴奏組曲を書いたのか」という問いが避けて通れなくなりました。
通説である、当時ベルリンの宮廷オーケストラが解散されてケーテンにやってきたヴィオラ・ダ・ガンバ奏者クリスチャン・アーベルやチェロ奏者リーニケの影響、というのも強い説得力を感じられないのです。

ヴァイオリンのための無伴奏ソナタとパルティータ6曲とチェロのための無伴奏組曲がセットで書かれたことはよく知られています。
最も高い声部の楽器と、通奏低音を受け持つバスの楽器。和音を同時に鳴らすのが可能で、フーガのような多声部の対位法も可能な楽器、ヴァイオリン。一方で、それらが苦手だけれど、音が良く響き倍音が残るチェロは、弾き手と聴き手の耳と想像力に訴えて、多声部の音楽を可能にする・・・それがこのバッハの無伴奏組曲です。
バッハの鍵盤作品の多くが教育的目的だったのと同じように、ヴァイオリンとチェロのためのこれからの作品もそう考えられます。
最近の研究では、バロック時代には色々なサイズの「ヴィオロンチェロ」があったことは広く認められているところですから、全6曲が現在のチェロと同じ大きさの楽器でされる必要はないことは分かります。特に6番では5弦の楽器が指定されています。4番のフラット3つでアルペッジョが続くプレリュードでは、小さなサイズだと演奏し易いでしょう。ただし、低音の残響は必要です。どのくらいのサイズでしょうね・・・!?

1700年から1720年頃までにチェロのために組曲は他に書かれているのでしょうか。フランスで好まれた組曲の形式をドイツでは、17世紀終わりにヴィオラ・ダ・ガンバのためにガンバ奏者アウグスト・キューネルによって書かれています。
が、チェロには・・・?
バッハの頃には、オーケストラにおけるバス楽器はチェロが一般的になっていたのだろうと思います。ヴィオローネやガンバも使われていますが。
出発点をイタリアに持つチェロとチェロのための独奏作品、そしてイタリアのチェリストたちがヨーロッパ中で活躍した17、18世紀。それがバッハの周辺にどのように影響があったのでしょうか。

無伴奏組曲の第1番と第4番のプレリュードは連続する分散和音(アルペッジョ)で書かれていますが、それぞれ別のリズム(音形)で、和声進行も違います。
調性の響き、それから和声進行と特にソプラノパート(最も高い声部)とバスパート(最も低い声部)の音の動きによって、心がどう動かされるのか味わいたいと思います。
同じ音形のアルペッジョを持つバッハの別の作品と、この無伴奏組曲の情感(曲の性格)は直接関係はないかもしれませんが、どんなものがあるのか探してみるのも興味深いことです。

一回のコンサートでは焦点を絞ってまとめられないので、これから継続して、探りつつ、深掘りしつつ、少しずつ範囲を広げて取り組んでいきたいと考えています。

地球上で長引く戦争が今年も終わらずに継続していくのでしょうか。そして人々は疑心暗鬼に陥り、不安を募らせ、ますます内向きになり、独裁者に従い異物を取り除こうと、過去の人間の悪い歴史を繰り返すのでしょうか。
先の大戦経験世代の方々の訃報が続いています。
一人一人の命を思うのと、音楽の一音一音、そして小さな変化を大切にしながら演奏するのは同じように尊いものだと、心から感じるこの頃です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2024 年 12 月 17 日(火)14:00
BEATA コンサートシリーズ 60
J. S. バッハ無伴奏チェロ組曲と その周辺

富田牧子(チェロ)
【曲目】J. S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV 1007
第4番 変ホ長調 BWV 1010
ヴィターリ、ガブリエッリ 、A.キューネルの作品
【場所】BEATA オルガン練習室
◇有楽町線「江戸川橋駅」2番出口6分 ◇東西線「神楽坂駅」2番出口9分 ◇目白駅から都バス白 61 新宿駅西口行き
「山吹町」下車2分
各回20席限定・要予約 4,000円
【予約】BEATA (ベアータ) 03-6317-8916 e-mail: beata@ab.auone-net.jp
チラシpdfはこちら
posted by makkida at 22:41| J.S.バッハとその周辺 | 更新情報をチェックする

2023年09月28日

秋のソロコンサート(横浜)J.S.バッハ

横浜・関内のBELUGAオルガン練習室にて「おはなしコンサート」のご案内です。
今回はバロックチェロで弾く、J.S.バッハ・プログラム。無伴奏チェロ組曲第1番と第3番。そしてコラール(ドイツ語による讃美歌)から。
天におられる私たちの父よVater unser im Himmelreich〜第4節の歌詞を使ったヨハネ受難曲の第5曲「あなたの御心がなされますようにDein Will gescheh, Herr Gott」、BWV126からコラール「恵みもて我らに平和を賜らんことを(恵み深く我らに平和をお与えください)Verleih uns Frieden gnadiglich」、受難曲からのコラール「いつの日かわれ去りゆくときWenn ich einmal soll scheiden」・・・これはJ.S.バッハの所蔵楽譜にあったカイザー伝のマルコ受難曲と、J.S.バッハのマタイ受難曲から、イエスが十字架上で生き絶えた直後のコラール。3つを取り上げてみたいと思います。
それから、リュートのための前奏曲BWV999のハ短調。
ヒストリカルな製法でのガット弦を張ったチェロの響きを味わっていただけたら幸いです。
アットホームな空間で10名という限られたお客様と音楽を味わえる場にできたらと思います。
久しぶりに首都圏でのコンサート。お近くの方ぜひお越しください!
2023年11月23日(木祝)
おはなしコンサート@BELUGA「J.S.バッハ〜無伴奏チェロ組曲とコラール」

2回公演 各回定員10名
【時間】11:00/14:00
【料金】完全予約制(お茶付き)
一般4,000円/高校生大学生2,000円/中学生以下1,000円
未就学児無料(1席ご用意有ます)
【場所/主催/予約/問合せ】BELUGA(ベルーガ)オルガン練習室(横浜市中区常盤町3-34 和風ビル2F)belugaorgan@icloud.com 電話 045-662-5536 (10-20時/不定休)
2023牧子11月コンサート@beluga修正1-2.jpg
💡チラシ.pdfはこちら!
posted by makkida at 00:00| J.S.バッハとその周辺 | 更新情報をチェックする

2023年09月18日

9月17日プログラム「J.S.バッハ〜無伴奏チェロ組曲とコラール」

◆◆◆◆20230917富田牧子無伴奏バッハチェロ組曲 コンサート.jpg
京都のアイガットサロンさんにて始めてのコンサート、J.S.バッハプログラム、終了しました。心から音楽を楽しんで、コンサートを喜んでくださっているオーナーさんと、温かなお客様に支えられ、たっぷり2時間2回公演、気持ちよく集中できて楽しい時間を過ごすことができました。どうもありがとうございました!
この内容を別の場所で、また、このテーマで第2弾をできたら嬉しいです。
告知記事はこちらからお読みいただけます。
当日のプログラムです。

2023年9月17日(日)富田牧子 バロックチェロ コンサート 於 アイガットサロン

J.S.バッハ〜無伴奏チェロ組曲とコラール
program


リュートのための前奏曲
Prelude in C minor for lute BWV 999


コラール(讃美歌)「天におられる私たちの父よ」
Vater unser im Himmelreich

ヨハネ受難曲より第5曲「あなたの御心がなされますように」
Choral - Dein Will gescheh, Herr Gott from “Johannes-Passion BWV 245”

カンタータ第101番より第7曲「我らを汝の右の御手もて導き」
Choral - Leit uns mit deiner rechten Hand from Cantata BWV 101


無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV 1007
Suite for violoncello solo in G major BWV1007
プレリュード/アルマンド/クーラント/サラバンド/メヌエットI, II/ジーグ

〜休憩〜

コラール「ああ 血と傷にまみれし御頭(みかしら)」
O Haupt voll Blut und Wunden

R.カイザー『マルコ受難曲』より「いつの日かわれ去り逝くとき」
R. Keiser : Choral - Wenn ich einmal soll scheiden from “Markus-Passion”

マタイ受難曲より第62曲「いつの日かわれ去り逝くとき」
Choral - Wenn ich einmal soll scheiden from “Mathäus-Passion”


コラール「恵みもて われらに平和を賜わらんことを」
Choral - Verleih uns Frieden gnädiglich

カンタータ第126番より第6曲「恵みもて われらに平和を賜わらんことを」


無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV 1010
Suite for violoncello solo in C major BWV 1010
プレリュード/アルマンド/クーラント/サラバンド/ブーレ I, II/ジーグ

IMG_1195.jpg

次回 アイガットサロンにて
2023年11月11日(土)2回公演 14:00/17:00
大内山薫(バロックヴァイオリン)×富田牧子(バロックチェロ ) デュオコンサート
”インヴェンション”
コレッリ、ボンポルティ「インヴェンツィオーネ 」より、J.S.バッハ「インヴェンション」より 他
posted by makkida at 11:50| J.S.バッハとその周辺 | 更新情報をチェックする
当サイトの写真、記事の無断転載・無断使用はご遠慮ください。 Copyright 2023 Makiko Tomita Kida, all rights reserved.